2023年1月16日手稲山遭難事故

阿部山から手稲山を望む

 今回は、身近な場所で起こった、遭難事故についてコメントします。毎日、視界に入る手稲山です。手稲山は、札幌オリンピックの舞台となるほどの、スキーが盛んな山です。自然が豊かな場所であり、夏場は多くの登山道や、散策路がある市民の憩いの場所でもあります。

 そして今回事故が起こった場所は、スキー場の裏斜面にあたる場所、手稲山から連なる連峰は、冬はバックカントリーが盛んな場所となります。

背景と経緯

 今回、遭難した方は、40代男性、一晩ビバークもしたというのですから、それなりの装備もしていたと思われ、スキー場から外れて迷い込んだというわけではなさそうです。(捜索中にボーダーがスキー場から外れて迷い込み、この捜索隊に助けられたという、珍事もありましたが。その方は幸運でした。)

 多くの雪山登山者が入る山なのに、なぜという疑問が起こります。報道からはほとんどの情報が得られないので、推測の域を出ません。

 一度、手稲山頂上まで上がられたといううことですから、頂上からどの方角へ向かえば、わかると思います。しかも、15日はさほど降雪も少なく、アプリの情報からして、それなりの登山者がいたと思われます。頂上からは、北はスキー場、南は平和の滝方面の夏山登山道、東斜面は林を抜けていけば、何とか市街地へ抜けることができます。

鉄塔

迷い沢方面中腹の鉄塔

 本人は、平和の滝方面に出て行ってしまった、と言ってましたので、おそらくは、手稲スキー場方面から登ったと思われます。しかし、平和の滝方面と思ったのが、夏場の登山道のがれ場の方へ行ってしまったのではないでしょうか。平和の滝方面に向かえば、どこからでも見える、鉄塔が連なってます。手稲山方面の登山道へ上る情報には必ず、鉄塔を目印に登る情報が多く寄せられます。ここまでくれば、ツェルトでのビバークも容易でやや、風雪も防げます。

 この鉄塔が見えてないとすれば、こちらの方面へは来てなく、最悪西斜面を降りて行ったと思われます。そちらの方は、目印として、琴似発寒川がありますので、地形がわかれば、これの沢に沿って降りていけば、平和の滝方面の登山道があります。それ以降は、奥手稲山を越えて、定山渓方面へ行くしかありません。

情報共有

遭難者がどれだけ情報をもって手稲山へ登ったのでしょうか、スマホがあれば、YAMAPやYamaRecoのアプリを利用すれば、自分の位置と、正規のルートの乖離がわかります。YAMAPに至っては、他のヤマッパーと位置情報の共有ができます。有料ですが、私の入ってるプランのYAMAP山岳保険が600円から200円に下がりましたので、その差額とわずかな金額で、YAMAPのプレミアム会員に入れると思います。

 まごころ少額短期保険株式会社 に加入先が変わり、山のみの保証なので、各種プラン、格安で提供してくれてます。従来のYAMAPの保険より適用範囲が山のみに狭くなりましたのでご注意ください。

ビバークできるくらいの人が全く手稲山の雪山登山道の情報を持たずに、スマホ片手に気軽に登ったとは思えません。

生死の分かれ目

今回の遭難事故でどの地点で、救助要請すればよかったのでしょうか。救助要請した時には、すでに動けなくなってしまいます。救助要請した後は、まず稜線に出て、できるだけ高い位置に行き、ヘリに場所を見つけてもらう、高い位置に来れば、携帯もつながりやすくなります。(手稲方面はauが最も範囲が広い)。携帯がつながったのであれば、GPSで位置情報を送ることができます。地図アプリを開くと、必ず最初に位置情報(GPS)をonにするか問われるので、必ずしてください。

 ですので、遭難者は、ビバークしてから翌日、数時間、行動していたと思われます。ただ、16日は天候は悪化し、むしろ体力が消耗します。動ける状態で、天候が悪化した朝に救助要請できたなら、救助隊の指示により、助かる可能性が大きくなります。

装備品

 遭難者は、ビバークできたということですから、少なくとも、スコップ、ツェルトはあった思います。一晩過ごすことができたので、多くのカイロやガスバーナーがあったのかもしれません。私は、スマホのほかに、従来のガラホ(ガラケー)の2台を持って入ります。ガラホは電池の持ちが違います。スマホはアプリを利用するのでどんどん電池が消耗します。そして、モバイルバッテリー、できれば、ソーラーチャージできるものがいいです。

 夏冬通して必要なのがGPS、金額が張りますが、最新のものは有料サービスですが、衛星を使った通信ができるものもあります。

 私はいつも一人で行動してますので、必要ないと思ってたのが、アバランチギアです。ビーコン、プロープ、スコップです。例えばビバークで雪穴から出られなくても、ビーコンがあれば、10数人で絨毯式に探すこともできます。もちろん、遭難者もビーコンを持つことが必須です。持っている装備を、登山計画で警察に届けて下さい。警察のサイトからメールで送れます。

救助が続いてるなら、今回、アバランチギアを用意し、救助隊が入ってない、定山渓側から入ろうと思ってました。(少しでも、目線があれば探しやすと思われ。)しかし、捜索が中止となりましたので、断念してます。

一人で登ること、そして、自分の考え

 私は1月は高い山には登りません。1月の北海道は天候もよくなく降雪が多く、難度が高くなります。装備の確認で200~300mの初心者向けの広陵には登りますが。

 他の人は山には誘いません、むしろ、装備の乏しい人は、いかないように勧めます。一人で登るということは、いつでも引き返すことができます。複数だと、意見が分かれます、登山の安全の確保は、自分です。自分がどれだけのことができるかは、自分の判断によります。

 いつも感じてることは、山が自分を受け入れてくれてるかどうか、少し、神がかりにもなりますが、山が自分を拒絶してるなら、何らかの兆候が見られます。天候の悪化、近くで小さな雪崩、滑落、山からの警告ととらえます。一人で登ると、そういった自然からのサインのようなものを感じることができます。複数だとそれが半減します。

まとめ

 とにかく、山で迷ったとき、特に、冬山の時は、引き返す。そこには、今まで自分が通ってきたトレースがふもとまで導いてくれます。天候が悪化したら、自分の来た方向を振り返ってください。トレースが消えかかってたら引き換えすサインです。どの時点で、安全にふもとまで戻れるか、判断が必要です。無理に山頂まで登っても、そこには何もありません。ふもとまで戻り、条件の良いときにまた登る。機会がなければ、その人は、その山とは無縁と考えてください。無理に入っても、山からは帰してはもらえないでしょう。

 バックカントリー2年目の経験が浅い自分が、今回の遭難事故で感じたことを書きました。身近な山で、まずは、起こることが考えられない遭難事故でした。いつも言ってます。安全の確保ができないなら、前に進まないでください。それができない人、誰かに連れて行ってもらえばいいという考えの人は、登山はおすすめしません。旅行会社が企画した、利益目的のツアーには参加しないでください。過去に何度も事故が起きてます。(中にはしっかりと計画されたツアーもありますが、経験がなければ判断できません。)まず最初に講習会に参加するか、地元の山岳協会に属した人がガイドするツアーに参加してください。

 以上が、2023年1月16日に起きた遭難事故の自分の考えでした。

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